刑事司法の介入と業界に対する信頼感 - 元検弁護士のつぶやき
刑事司法の介入と業界に対する信頼感
三笠フーズの事故米食用転用偽装について、農水省の対応にも批判が集まっています。
これまでは、産地偽装が多数発覚し、警察の捜査も何件か着手されていますが、今回は、健康被害に直結しかねないさらに悪質な偽装です。
農水省は、今後は事前通告なしの抜き打ち検査をすると言っているようですが、今まで、三笠フーズの転売情報を得ていたにもかかわらず不正を見抜けなかった農水省にどの程度の調査能力があるのか、調査の実効性はどの程度なのかという不信感は払拭できないところです。
このように、業界の底なしの偽装体質があらわになってきたにもかかわらずそれに対する行政の監督が期待できないのではないかという状況があるのであり、そうなると社会は伝家の宝刀を抜かざるを得ないわけです。
つまり、刑事責任の積極追及による一罰百戒効果の発揮です。
一罰で足りなければ二罰、三罰、百罰です。
法改正による厳罰化も視野に入ります。
農水省と関係業界が、そのような状況を避けようとするならば、業界の自浄作用と農水省の監督能力の証明が必要になっている状況だと思われます。
このブログでは、どんな話題でも医療に関係付けてコメントをされる方が多いので先取りしますが、この問題を医療に当てはめると、医療に対する刑事司法の介入を最小限度にしようと思えば、医療が刑事司法から信頼される必要があるということです。
そして、今回の大野病院事件の判決によって、刑事司法の最終判断者であって最高権威者の裁判所(地裁どまりではありますが、警察・検察との関係では明らかに上位者です)から、医療に対する信頼感が示されたのです。
裁判所が医療を信頼して無罪を言い渡す可能性のある事案については、検察も起訴を躊躇します。
検察が起訴しそうもない事案については、警察も力が入りません。
ですから医療側としては、裁判所の信頼を今後も傷つけることなく強化していくことがとても重要だと思われるわけです。
私が、「誠実な医療の重要性」を書いたのはそういう意味なのですが、意図がなかなか伝わらないようですので、私も食品業界の現状にかこつけて再度指摘してみました。
モトケン (2008年9月 9日 10:32) | コメント(90) | トラックバック(0) このエントリーを含むはてなブックマーク (Top)
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