2012年11月7日水曜日

教訓を生かせず、進歩していない姿をさらした。どういう取り調べが行われていたのか、検証と社会への報告が不可欠である。

PC遠隔操作事件 もう「足利」を忘れたのか (産経新聞) - Yahoo!ニュースからの引用
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121106-00000117-san-soci


先の大学生のPC通信履歴には、横浜市HPへの接続時間が「2秒」で、この間に「250文字以上」の書き込みがなされていた記録が残っていた。極めて機械的なこの操作記録こそ不正プログラムにひっかかった痕跡なのだが、神奈川県警も横浜地検もこの不自然さにこだわらなかった。大阪府警が逮捕したアニメ演出家のPCからは大阪市のHPに実名で脅迫文が書き込まれていた。不自然さを認識しつつ、それでも府警は逮捕に踏み切った。

 重大な事実が顔を出していたのに置き去りにされたのは、いずれもIPアドレスという“堅い物証”があったからだ。DNA型一致という“客観証拠”の前で思考停止となり、供述の不自然な変遷を置き去りにしてしまった足利事件と全く同じ構図ではないか。

 ◆必ず真犯人を割り出せ

 三重県警が逮捕した男性は一貫して否認を続けた。彼のPCが脅迫メール発信元であることは間違いない。それでもなぜ否認するのか。取調官は「どういうことが考えられるか」と男性の話を聴いた。男性はPC乗っ取りの可能性を指摘した。県警は同種事件を捜査中の大阪府警に相談し、これがウイルスの痕跡発見につながった。

 三重県警の取調官が容疑者の話を聴こうと考えたのは、周辺捜査から動機が浮かんでこない「一抹の不安」があったからだという。気掛かりを放置せず、引き返すことを辞さない勇気。それが出たのは、今回の誤認逮捕ショックの中の光明といっていい。一方の大阪府警は「いくら否定しても聞く耳を持ってくれなかった」と逮捕男性側から厳しく批判を受けた。

 いずれにせよ、警察・検察は「足利」の教訓を生かせず、進歩していない姿をさらした。どういう取り調べが行われていたのか、検証と社会への報告が不可欠である。

 それだけではない。遠隔操作事件の「真犯人」を何としても割り出さなくては、捜査の信頼回復は望めない。

 この事件は空恐ろしいものを内包している。PC、ネットが生活インフラになる中で、自在に遠隔操作を可能にさせる現状は社会秩序を崩壊させかねない。捜査員はその危険さを認識しているはずだ。「他人のPCを乗っ取って要求を突き付け身代金を振り込ませ、海外の仮名口座から引き出されれば、犯人の痕跡をつかめないまま誘拐や恐喝がまかり通ってしまう」

 頻発した身代金誘拐、企業恐喝に対し警察は現金授受現場や逆探知で検挙に次ぐ検挙を重ね、「誘拐は成功しない」との共通認識を社会に刷り込んで撲滅させた。摘発こそ最大の防犯なのだ。遠隔操作も同様。あらゆる犯罪のインフラになりかねないPC遠隔操作に対し、警察・検察は防圧する捜査力と態勢を整えなければいけない。

 遠隔操作事件がわれわれの喉(のど)元に突き付けたものは極めて危険なのだ。


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