2012年11月13日火曜日

この政策は、やはり依頼者・市民の「実害」と、弁護士ではなく、依頼者・市民の現実的救済という観点からも、見直さなければなりません。

元「法律新聞」編集長の弁護士観察日記 大新聞が着目した弁護士増員の「実害」からの引用
http://kounomaki.blog84.fc2.com/blog-entry-576.html


見出しの「三重苦」とは、弁護士増、仕事減少、司法書士参入を指しています。あくまで同業者たちの声を借りる形ではありますが、実績のあるベテラン弁護士が今、なぜ、という疑問に、記事は、一つの回答を導き出そうとしています。以前のエントリーでも書いたように、弁護士が依頼者のおカネを詐取するという行為の重大性からすれば、すべて弁解がましく聞こえますし、それを同業者が口にすることに対しては、異論を唱える人もいるかもしれません。経済環境の変化を不正の理由にするな、甘ったれるな、と。

ただ、むしろ、それだけに大新聞が、この着眼で今回の事件を取り上げたことには、意味があります。逆に、これはどんなに弁護士の「心得違い」をいってみたところで、市民が背負うことになる「実害」につながるということです。弁護士を激増させて、何の「実害」があるのか、ほとんどない、メリットが上回るという意見に対して、提示している現実です。弁護士を「甘やかす」必要はないけれども、一方で弁護士を経済的に追い詰めて、市民に現実的にどういうしわ寄せがくるのか。そのことを、少なくともこの記事には、前記異論も分かったうえで、市民にフェアに提示して、判断を仰ごうとする姿勢が読みとれます。

つまりは、それでも激増政策を支持しますか、あるいはそれでも激増にメリットを見出しますかという話です。さらにいえば、増やすというのであれば、こうした市民にツケが回って来る環境は、何の手当てもしないで、ただ、増員政策を続けるだけで、大丈夫なのか、という疑問を喚起することにもなります。つまり、この政策が続く限り、この「実害」が生まれる危険な環境が続くのか、ということです。競争によって、問題弁護士が淘汰され、退場していくという考えに果たして丸投げできるのか、そのいつまで続くか分からない淘汰の過程で生まれ続ける犠牲者の問題を、この記事は気付かせるものといえます。

「今さら何を言っているのやら。それを望んだのが司法改革だったんじゃなかったのか。多くの弁護士が現在の事態を予測し、警告をしてきたというのに。それを無視してきたのは誰だというのか」(「Schulze BLOG」)

この政策に危機感を抱いてきた多くの弁護士からすれば、この記事に対して、こうした感想を持ってしまうことは、理解できます。その危機感をいう弁護士の声を、「自己保身」と一くくりにして、耳を貸してこなかったのもまた、大新聞でした。

しかし、この政策は、やはり依頼者・市民の「実害」と、弁護士ではなく、依頼者・市民の現実的救済という観点からも、見直さなければなりません。


ただいま、「弁護士の競争による『淘汰』」「地方の弁護士の経済的ニーズ」についてもご意見募集中!
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