2012年6月22日 朝刊
テレビで放送された優れたドキュメンタリー番組が、東京都内の映画館で相次いで上映されている。ドキュメンタリーは内容が高く評価されても、放送が深夜帯だったり、全国ネットではなかったりということが多い。劇場公開で、テレビでは見られなかった人にも作品に触れるチャンスが広がっている。 (宮崎美紀子)
劇場公開にいち早く取り組んできたのは、東海テレビ(名古屋市、フジテレビ系)。「死刑弁護人」を、三十日から東京・ポレポレ東中野で上映する。
オウム真理教事件、和歌山毒カレー事件、光市母子殺害事件など、死刑事件の担当で知られる安田好弘弁護士を追った作品だ。東海地方では昨年十月に放送され、文化庁芸術祭優秀賞を受賞するなど注目されたが、首都圏では未放送だった。
監督は斉藤潤一ディレクター。「裁判長のお弁当」「光と影~光市母子殺害事件 弁護団の300日~」など、司法をテーマに制作してきた。「光と影~」の取材で、信念を曲げない安田弁護士の生き方に興味を持ったのが今回のきっかけだ。
作品は、世間からバッシングを受ける安田さんに深く入り込んでいる。「カメラ嫌いの人なので、懐に飛び込もうと思った。取材の後は必ず一緒に食事に行った。本来なら一歩引くべきかもしれないが、密着しないと撮れなかった」と斉藤さん。事件を取材し、放送して終わり、ではなく「なぜ起きたのか、何が原因なのかを一つずつ拾い上げていくのがドキュメンタリー」と語る。「映画館でのお客さんの反応が、次の作品の糧になる」
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